「医師はタブレットを使用しているのに看護師は使えない」というお話をよく聞くので、考えをまとめました。
きっかけになったのは以下のツイート.
フォロワーじゃない方からもいいねをたくさんもらいました.
確かに,まわりの看護師さんにiPadを使っている人はいない.
どこの病院でも看護師はiPadを使えないのか
Answer: 病院による.ただ,使えない病院の方が多いよう.
いろいろな意見をいただきました.
公立や私立はあまり関係のない印象.
ただ,医師は個人スマホもタブレットも使っているのではないでしょうか?
もちろん看護師さんのほうが,患者さんのベッド再度にいる時間が長いため使いにくいだろうとは思います.
医師はどこで,どのタイミングでタブレットを使用するか
主にカルテの前で考えながら知識を確認するタイミングでしょう.
- 診断基準
- 薬品の量
- 鑑別診断
- 疾患ごとの知識の確認
筆者はこんなことに使っています.
それぞれ医師ごとに使っているツールや場面は様々ですが,知識の確認に使用している先生は多いと思います.
ここで不思議に思うのは看護師さんは知識の確認をどうしているの?ってことです.ポケットに入っているメモ帳でよく見ている人が多い印象.
使用する場所についても,問題にされることが多いので強調しておきましょう.
筆者が使用するのはカルテの前です.ベッドサイドや患者さんの前ではありません.
病棟で医学知識を確認するのに使用するツール
筆者が知識の確認に使用しているツール(主にiPadで見ているもの)
- Uptodate(有料の医学情報まとめサイト,英語だがChormeで日本語化可能)
- 自分で作成したノートアプリのメモ
- 医書.jpやM2plusで医学書
- 医学書のPDFデータ(自作)
- 論文検索
- iOSメモで作成しているちょっとしたメモ
ざっと上げるとこんな感じのものをタブレットで見ています.
このうちupdateと論文検索以外はオフラインで可能なので,機内モードでも全く問題なく利用できます.
wifi接続不要.ローカル環境だけで完結します.
医療機器への影響の指摘があったので,ここも強調しておきましょう.
病棟でのiPad使用で問題になる点
病棟内でタブレットや電子機器を使用する際に問題になると指摘された点を紹介します.
筆者の想定している病棟での使用シーンはカルテの前です.決して,患者さんの前や診察しながらではありません.
感染対策面
感染対策としては,確かに患者さんを触ってタブレットを触ってとしていたら,感染管理のうえで問題ですが,そんな使い方をする人はあまりいないでしょう.
普段だって患者さんと接したら手指消毒は基本のはずです。(そうでなければカルテ端末自体が汚染される)
また,そういう指摘をするひとは「紙」についてはどう考えているのか知りたいです.
毎日みんないろんな病室間を持ち歩きまくっている紙.
タブレットは表面全部アルコールで拭けますが,紙はどうでしょう?
電子カルテのキーボードは? 電子カルテ触るまえは手の消毒をしているはずなので,そのタイミングでタブレットを触ることにはなんの問題もないはずです.
医療機器への影響面
おそらく最も問題になるのはこの点でしょう.
多くの医師のポケットには通常モードのスマホが入っていることはおいておいて話をすすめましょう.
2014年の医療機関における携帯電話等の使用に関する指針についてというPDFをネットで見つけました.
おそらくもっと新しい指標もあると思うのですが,大枠は変わっていないでしょう.
読むと,院内の場所に応じて使える場所を決めましょうということでした.
カルテの前での使用かつ機内モードでの使用であれば,大きな問題にならないと考えるのですが,いかがでしょう?
看護師の場合には,カルテの前=ベッドサイドとなりやすいのが問題点ですね.
この辺については院内ルールに従うしかなさそうです.
機内モードを有効にすると、Bluetooth 以外の無線通信がすべて無効になります。機内モードの間に Bluetooth を無効にした場合、デバイスがその設定を記憶するので、次回機内モードを有効にしたときも無効になります。
https://support.apple.com/ja-jp/HT204234
Apple公式サイトには機内モードについて↑のように記載があります.
WifiとBluetoothがOFFの状態です.
この状態ならは院内で頻用されるPHSや電子カルテ端末よりも医療機器への影響が少ないのではないか,と思うのですがいかがでしょう.反論があればコメント欄にお願いいたします.
それはそうなんです。
ここで紹介した医療機器への影響はICUなど高度な医療機器への影響を想定しており、そのような状況では患者さんはスマホを使えない想定です。
タブレットを使用しない不利益
タブレット端末を利用しない不利益を逆に考えてみました.
知識の確認ができない
もっとも大きな不利益が知識の確認ができないことです.
膨大な医学知識を使用するのに記憶のみに頼るのは危険なことはあきらかでしょう.
(反論がありそうなので事前に書いておきますが、全ての物事について調べる訳ではありません。知識に曖昧さを感じた時に調べるのです。確認しないことはむしろプロフェッショナリズムに反すると思います。)
「本で確認できる」ということもありますが,病棟においておける本の量,持ち運べる本の量には限りがあるのもまた事実だと思います.
持ち歩ける紙媒体の知識が限られている以上、知識の確認のためにタブレット端末を使うのは有用なはずです。
手持ちの本だけでは知識の確認ができない可能性を考慮すると大量の知識を持ち歩ける電子端末を利用できないのはデメリットと言えるでしょう。
看護師がiPadを病棟で使えない理由
筆者は医師であり、看護師ではないので推測になってしまいますが、考察してみます。
医師よりもベッドサイドの時間が長いため使いにくい
最も大きな原因は働く場所の違いでしょう。
看護師はベッドサイドで働く時間が長くなるため、タブレットを含めて個人の電子端末は使いにくい。
これは職種の問題ですから、解決しにくいです。
ただ、この論点からはスタッフステーションで使用することは問題ないはずです。
閉鎖的な環境
医師は病院を転々としながら働くことが多いため、外の病院の文化を受け入れることが多い一方でスタッフが固定となりがちな、看護師さんの環境では上司も部下も固定となるため新しい物事を受け入れてもらうことは難しいでしょう。
この点は使っている人を増やして文化として、浸透させていくしかないと考えています。
大手の出版社などで取り上げてもらえるとこのような閉鎖的な状況を打破するきっかけにもなりそうですが。
こういった記事を書いている理由でもあります。
最後に
医師以外の職種にも、タブレットの活用が広がることを目標の一つにしてます。
この記事の内容に共感いただいた場合にはTwitterなどSNSで拡散いただけると嬉しいです。
コメントもお待ちしています。→いただいたコメントを次に整理しました。
追加:Twitterでの反応
Twitterでは思ったよりもタブレット使いこなしている病院も多い印象でした。
もっと使える環境になって欲しいという意見
タブレット活用している方々の意見
海外では患者識別システムがそもそもカルテって感じなんですかね?自分の病院ではバーコードリーダー的な感じで数十年前のコンピューターって感じです。差がすごい。
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