イラスト解剖学は基礎的な解剖学知識+医学の基礎を教えてくれる名著です。模式的で分かりやすいイラストや、臨床的な内容と絡めて解剖学を理解できるので記憶に残りやすく、発生学、生理学も合わせて学べます。
最近、このサイトのtwitterを医学生以外の医療関係者の方(勉強熱心な看護師さん)などがフォローしてくださることが増えています。
このサイトは医学生以外の方にも見て頂くことを目標に作成しているので嬉しい限りです。そこで今回は医学生にも、医学生以外の医療関係者の方にも役立つ内容をお届けしようと思います。もちろん医学生にも役立つと思います。
イラスト解剖学について
イラスト解剖学は医学生にはおなじみの解剖学の教科書です。医学生の中には持っている人も多いのではないでしょうか。略して「イラ解」と呼ばれることもあるこの解剖学の教科書ですが、医学生以外の医療系の方はご存知でしょうか?解剖学は医学の基礎になるものであると、医学部高学年になるにつれて思います。この教科書は分かりやすい記述に加えて、分かりやすい模式図が各ページに記載されていて、理解にとても役立ちます。医学生以外の方にもきっと役にたつものだと思い今回紹介させて頂きます。解剖学を学び終えた医学生でも、もう一度読み直すと役立つ部分も多いのではないかと思います。
どんな教科書か
どのようなコンセプトでこの本が書かれているかは、この本のまえがきから分かって頂けると思うので、出版元の中外医学社のサイトから引用させて頂きました。
改訂9版の序
毎年,新年度のガイダンスで,学生はエラい先生から「解剖学は暗記することが山のようにあるから勉強しろ」と説教される.その度に心の中で「解剖学は暗記なんかじゃない」と叫ぶのだが,声に出さないので誰の耳にも届いていないようだ.おそらく彼のエラい先生も学生時代に暗記していたに違いない.
姿かたちを見たこともないアイドルの名前を50人憶えろと言われて,簡単に憶えられる人は何人いるだろうか.カッコイイとかカワイイというイメージがあればすぐに憶えられるが,イメージがなければ,まして興味がなければ,名前など短期記憶にもならずに終わる(解剖学も同じことです).
解剖学は「医学の基礎」という表札を付けられ,大抵は低学年で授業される.もちろん,解剖学が医学の必須情報を含んでいるためだが,その情報を憶えるのは臨床科目が始まってからで,最初は「イメージ」を取り込まなければならない.要するに,解剖学は「ヘエ!」や「ナルホド!」を経験し,「知識」ではなく「融通の効く知恵」を身につけるための科目なのである.
この心の叫び(単なる勉強嫌い?)を伝えたいと,20年前に初版を上梓した.多くの立派な解剖学書の陰で生きながらえてこられたのは,本書を購入してくださった沢山の「勉強嫌い」のお蔭だが,同時に様々な情報やお知恵を賜った諸先生,著者以上に「あら探し」に精を出してご批判頂いた方々,そして本書のマンガをパクってインターネットなどで広めてくださった方のお力添えも大きい.
今回,札幌医科大学の馬場美帆氏のお許しを得て,氏の研究成果による「大腿骨長からの身長推定」(Journal of Forensic Radiology and Imaging. 2016)の頁を作らせて頂いた.本書が少しでもアカデミックに見えたなら,馬場氏のお力である.
また,旧版をお持ちの方はお気づきかと思うが,本版ではマンガの多色化を行った.もともとカラーに堪える図ではないが,中外医学社の血の滲むような努力で「最初からカラー版だった」かのような仕上がりとなった.旧版をお持ちの方にも,是非もう1冊カラー版をお手許に置いて頂ければと願う次第である.
最後に,初版発行以来お力添えを頂いた数多くの皆様,著者の我儘を粘り強く論破してくださった中外医学社企画部の小川孝志氏,9版の完成に走り回って頂いた編集部の井上佐保子氏に深く感謝申し上げる.2017年1月
松村讓兒http://www.chugaiigaku.jp/item/detail.php?id=1969#ebookより引用されて頂きました。
まえがきから分かって頂けるようにこの教科書は暗記させるためではなく、理解して応用することのできる知識 を教えようとしてくれます。
事実の羅列だけではなく、向こうから分かりやすく教えてあげようという意識 が文からも、絵からも伝わってきます。
サンプル画像
どのような教科書かもっと詳細にお伝えしたいのですが、教科書の写真を貼るわけにもいかないので、中外医学社のサイトのサンプルページからサンプル画像を引用させていただきました。
http://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse1969.pdfより引用させて頂きました。
▲上のサンプルページは総論的な内容のページなので、いまいち解剖学のページのイメージは伝わりにくいですが、雰囲気は分かって頂けるのではないでしょうか。
ページの構成としては、上半分が図で下半分が説明文という内容です。このページは悪性腫瘍についての内容ですが、解剖学の教科書にも関わらず、このような医学的な基礎知識もたくさん記載されてるのがこの本の魅力でもあります。
図は前の版までモノクロだったのですが、最新版からはフルカラーになっているのでさらに見やすくなっています。筆者はモノクロのときに購入しましたが、自分で色を塗っていました。
解剖学に意味を与えてくれる内容
内容は基本的に解剖学ですが、生理学、組織学、発生学など複数の分野のことを引き合いに出し、解剖学を理解させてくれます。また解剖学の教科書によくある解剖学的な名称の羅列は少なく、「このような構造だからこのようなことに役立っている」というように、解剖学的構造も説明してあるので読んでいて面白いです。解剖学的な理由で起こる疾患についても多数の記述があり、単純暗記になりがちな解剖学が意味を持った存在であることを教えてくれます。
筆者がおもしろいと思った内容の一部を紹介します
- 喉元すぎれば熱さを忘れる理由
- 上目づかいでまぶたが上がる理由
- 夜尿症の原因
この教科書がオススメである一番大きな理由は医学の基礎を教えてくれることです。医学の基礎の具体例としては
- うっ血と充血の違い
- 胸部X線のPA像とAP像の違い
- 下痢はどのように起こるか
- 「いきむ」というのは解剖学的にどういうことで、いきむと顔が赤くなる理由
- 嘔吐はどのようにして起こるか
上に列挙したのはこの教科書の内容の本の一部です。特に医学の基礎の部分は医学生でも暗記中心の勉強をしている方の中には知らない方いるかもしれません。この教科書で「暗記の隙間」を埋めるととても良い勉強になると思います。
また医学生以外の医療関係者の方は、このような内容の勉強をする機会は少ないのでは無いでしょうか。読んで面白く、役に立つ内容も多いと思いますので、医学生以外にも広がってくれれば良いなと思います。
まとめ
医学生以外にも役立つ教科書の紹介でした。医師以外の方と関わる機会が少ないので、この記事を読んでくださったコメディカルの方からのコメントお待ちしています。
なおこの教科書は電子書籍版でも発売されていますが、おそらく紙のほうが読みやすいです。筆者は紙で読んでからPDF化しました。最初に読む方は紙媒体での購入がオススメです。
ちなみに他に医学生以外にもオススメな教科書があります
▼で記事にしてあるので御覧ください
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